奥多摩は、駅に着いてからが本番です。渓谷も湖も登山口も、奥多摩駅から先へさらに移動しないとたどり着けません。車がない人にとって、その足になるのが路線バスです。

ただ、都心のバスとは感覚がまったく違います。「バス停に行けばだいたい来る」ものではなく、その日の何時何分の便に自分の予定を合わせる乗り物です。ここでは、バスを前提に奥多摩の一日を組むときの考え方を整理します。

奥多摩駅前が、ほぼすべての起点

奥多摩エリアの路線バスは西東京バスが運行していて、その多くが奥多摩駅前から発着します。駅を出てすぐのロータリーがバス乗り場です。行き先はおおまかに、

  • 奥多摩湖・その先の山梨方面へ向かう西寄りのルート(湖畔、雲取山方面の登山口などを通る)
  • 日原方面へ向かう北寄りのルート(谷を上がっていく)

に分かれます。目的地がどちら側かで、乗る系統も所要時間もまったく変わります。まず自分の行きたい場所がどの系統の沿線なのかを、出かける前に地図上で確認しておくのが第一歩です。

本数は「1時間に1本あればいいほう」

これがいちばん大事な前提です。奥多摩のバスは、路線と時間帯によって1時間に1本、あるいは数時間おきという水準です。朝と夕方に便が集まり、昼間が薄くなる路線もあります。平日と土休日でダイヤが違い、季節によって運行が変わることもあります。

つまり、一本乗り遅れると次が1〜2時間後、というのが普通に起きます。徒歩で戻れる距離ではない場所も多いので、これは日程そのものを壊しかねません。

奥多摩でバスを使うときは、行きの便より先に帰りの最終便を調べる。これだけで一日の失敗はほぼ防げます。

帰りから逆算して組む

具体的な組み立て方はこうなります。

  1. 帰りの最終便(と、その一本前)の時刻を決める: 目的地のバス停から奥多摩駅方向への便を調べます。最終より一本前を「本命」にしておくと、多少の遅れを吸収できます
  2. そこから逆算して現地の滞在時間を出す: 到着時刻と帰りの便の差が、実際に遊べる時間です。往復の歩きの時間もここに含めます
  3. 行きの便を決める: 滞在時間が足りなければ、行きを一本早めます。奥多摩駅到着の電車も、それに合わせて選び直します
  4. 雨や渋滞の余白を足す: 紅葉の時期や連休は道路が混み、バスも遅れます。ぎりぎりの乗り継ぎは組まないほうが安全です

電車側の組み立ては[電車での行き方の記事](/articles/okutama-access-densha)にまとめてあります。バスの時刻を先に決めて、それに合う電車を選ぶ、という順番がおすすめです。

乗るときの実務

  • 時刻は当日の公式ダイヤで確認する: 検索結果のキャッシュや古いまとめ記事ではなく、運行会社の公式時刻表を見てください。臨時ダイヤ・運休の告知もそこに出ます
  • ICカードは使えるが、現金も持っておく: 交通系ICカードで乗れますが、山あいでは残高のチャージ手段が限られます。小銭を含めた現金を予備に持っておくと安心です
  • 混む便では座れない: 連休の登山口方面や湖方面は、始発の奥多摩駅前から満員になります。座りたければ早めに列に並ぶしかありません
  • 降りるバス停の名前を控えておく: 車内は電波が弱いことがあり、地図アプリに頼りきると不安になります。停留所名と、その一つ前の名前をメモしておくと落ち着いて降りられます
  • バス停に待合施設はないと思っておく: 屋根もベンチもない停留所が普通にあります。夏は日陰がなく、秋以降は待っているだけで冷えます([服装と持ち物の記事](/articles/okutama-fukuso-mochimono)も参考にしてください)

バスが向く行き先、向かない行き先

向いているのは、バス停から歩いてすぐ着く目的地です。湖畔の展望地点や、駅から少し離れた渓谷沿いなど、降りてから徒歩数分〜十数分で完結する場所ならバスは強い味方です。運転しなくていいぶん、帰りに温泉に寄って一杯やることもできます([日帰り温泉の記事](/articles/okutama-higaeri-onsen))。

向かないのは、複数の場所をはしごする行程です。バス停をまたいで移動するたびに1〜2時間の待ちが発生しかねないので、一日に詰め込めるのは実質1〜2か所です。あちこち回りたいなら車のほうが現実的で、その場合の注意は[車で行くときの記事](/articles/okutama-kuruma-chushajo)にまとめています。

歩きとの組み合わせが、いちばん現実的

奥多摩をバスで楽しむコツは、片道だけバスに乗ることだと思います。行きはバスで一気に上がって、帰りは川沿いや旧道を下りながら歩いて駅に戻る。この組み方なら、帰りの便に縛られません。下り基調なので体も楽で、景色の変化もいちばん豊かに味わえます。

逆に、歩きで上がってバスで下りるのは、最終便に間に合わなかったときの逃げ道がありません。時間の読みに自信がないうちは、バスで上がって歩いて下るを基本形にしておくのが安全です。

まとめ

奥多摩のバスは、本数が少ないという一点を除けば、とても頼れる移動手段です。逆に言えば、その一点を軽く見た人だけがつまずきます。

出かける前にやることは3つ。目的地がどの系統の沿線か確認する帰りの最終便を調べるその一本前を本命にする。これだけで、車のない一日がぐっと組みやすくなります。