奥多摩は、都心から自転車で行ける範囲としては珍しく、山のなかを長く走れる場所です。川沿いの道を上っていくと景色が変わり、湖のあたりまで来ると空気の温度まで変わります。だから人気があるのですが、同時に「思っていたよりきつかった」で終わりやすい場所でもあります。
理由ははっきりしています。奥多摩のコースは、平地の感覚で距離だけを見て組むと、上りの量と補給できる場所の少なさで破綻するからです。逆にいえば、この2つを先に見積もっておけば、初めてでも気持ちよく走れます。
距離ではなく「上り」で難易度を測る
奥多摩を走るコースは、川に沿って上流へ向かう形になります。地図の上ではゆるやかに見えても、下流から上流へ向かう区間はほぼ一貫して上り基調です。行きはずっとじわじわ上り、帰りはずっと下る。これが奥多摩の基本の形です。
ここから、いくつか実際的な結論が出てきます。
- 行きの時間を基準に帰りを考えると、時間が余る。下りは同じ距離でも短時間で戻れます
- 逆に、上りで体力を使い切ると、帰りの下りが寒くて危険になる。汗が冷えるのは下りです
- 「行けるところまで行って引き返す」が成立しやすい。上流に向かって進んでいる限り、引き返せば必ず楽になります
初めてなら、目標地点を決めずに時間で折り返すのがいちばん安全です。「11時になったらそこで引き返す」と決めておけば、体力の見積もりを外しても破綻しません。
輪行で始点をずらす、という選択
都心から全部自走すると、奥多摩に着く前に平地で体力と時間をかなり使います。ここを電車で飛ばせるのが、奥多摩の大きな利点です。
青梅線には自転車を袋に入れて持ち込めるので、手前の駅まで輪行して、山の区間だけを走るという組み立てができます。走りたいところだけ走って、疲れたら電車で帰る。この逃げ道があるかどうかで、当日の心理的な余裕がまったく変わります。
電車そのものの本数や乗り換えについては、[奥多摩へのアクセス、電車での行き方](/articles/okutama-access-densha)にまとめています。輪行する場合も、本数の少なさという前提は同じです。
輪行袋への収納と組み立ては、駅のホームや改札の外で場所を取ります。初めてなら、家で一度練習しておくと当日あわてません。
補給できる場所は、想像よりずっと少ない
奥多摩のサイクリングでいちばん多い誤算がこれです。都心の感覚だと「走っていればどこかにコンビニがある」と思ってしまいますが、上流に行くほど店の間隔は開き、営業時間も早く終わります。
対策はシンプルです。
- 上り始める前に、水と補給食を積み込む。上流で買い足せる前提で走らない
- 水は思っているより多めに。上りは汗の量が平地と違います
- 食事をどこで取るかは、走り出す前に決めておく
お店の営業時間の考え方については、[奥多摩でランチをどうするか](/articles/okutama-lunch)が、そのまま自転車の補給計画にも使えます。奥多摩は「夕方には閉まる」が基本だと思っておいてください。
気温差と装備 — 上りは暑く、下りは寒い
奥多摩は、標高が上がるぶん都心より気温が低くなります。そのうえサイクリングには、上りでは汗をかき、下りでは風を受けて一気に冷えるという自転車特有の温度差があります。同じ日の同じ場所でも、上っているときと下っているときで体感がまるで違います。
- 上りは薄着でいい。ただし下り用の一枚を必ず持つ。畳んで小さくなる風を通さない上着が効きます
- 汗が冷えると効くので、乾きやすい素材を選ぶ。綿のシャツは避けたほうが無難です
- 朝晩は季節の割に冷えます。指先が冷えると下りでブレーキが不安になります
季節ごとの服装の考え方は、[奥多摩の服装と持ち物](/articles/okutama-fukuso-mochimono)にまとめています。徒歩前提で書いていますが、「都心と同じ格好だと寒い」という前提は自転車でも変わりません。
道路の状況は、走る前に確認する
山の道は、平地の道と違って通れない可能性がある道です。工事、災害、落石、そして季節や時間帯による通行止めが実際にあります。特に山を越えていく峠道には、通行できる時間が決まっている区間もあります。
- 出発前にその日の通行止め情報を確認する。道路管理者や自治体の公式発表が一次情報です
- トンネルや見通しの悪いカーブでは、後ろから来る車に見えているかを優先する。ライトは昼でも点けたほうが安全です
- 落ち葉と濡れた路面は、下りでいちばん効きます。紅葉の時期は特に慎重に
雨の日の判断については、[奥多摩が雨の日でも、行く価値はある](/articles/okutama-amenohi)も参考になります。ただし自転車の場合、雨の下りは徒歩よりはっきり危険です。無理をせず輪行に切り替える判断を先に決めておいてください。
走り終わったあとをどうするか
奥多摩の良いところは、走り終わったあとに汗を流して帰れることです。上って下って冷えた体を温めてから電車に乗ると、帰り道がまったく違うものになります。
立ち寄り湯の考え方は[奥多摩で日帰り温泉に立ち寄る](/articles/okutama-higaeri-onsen)に、車で来る場合の駐車場の押さえ方は[奥多摩に車で行くなら駐車場から決める](/articles/okutama-kuruma-chushajo)にまとめています。車に自転車を積んで来て、麓に停めてから走り出すという組み立ても、奥多摩では有効です。
まとめ — 見積もるのは3つだけ
- 上りの量。距離ではなく、どれだけ上るかで難易度が決まる
- 補給。上流で買える前提にしない。水と食べ物は先に積む
- 気温差。上りの暑さではなく、下りの寒さに合わせて一枚持つ
この3つを外さなければ、あとは景色を見ながら走るだけです。時間で折り返すと決めておけば、初めてでも「行きすぎて帰れない」は起きません。
営業時間・通行止め・季節の状況は変わります。出かける前に、道路と施設の公式情報を必ず確認してください。
